女性は妊娠によって、身体に様々な変化がおこります。お腹が膨らみ、出産に備えホルモンが分泌され、赤ちゃんに栄養を与えるために体重が増加し、体型も変化。出産後は自然と戻ると思っていた体型が意外と戻らないと悩む女性も多いようです。
なぜ身体が元に戻らないのか、ダイエットを成功させるヒントは何なのか、食事を減らすことが本当に正しいのか。そこで産後のダイエットについて、身体を診る専門家にお話を伺いました。
正しい産後ダイエットの方法
今回ご協力いただいた専門家
国家資格柔道整復師
阿久戸 和也さん
街の整骨院『和(なごみ)』院長。2012年4月に街の整骨院『和』を開業、2017年6月有限会社OLUPONOの取締役就任、2017年10月にはLife Nの技術指導責任者就任を兼任。
一般の方の治療から高齢者のリハビリ、ミュージシャンのアリーナツアー帯同サポートや舞台アーティストのサポートまで幅広く活動。専門的な知識はもちろんのこと、一児の父親であることから経験に基づいた家族に寄り添った視点で分析、解説する。
前回のおはなし |
vol.1 【専門家監修】産後の“骨盤の歪み”ってなに?正しい対処法とお助けグッズとは。 |
極端な運動や食事制限は必要ない。1日1分トレーニングメニューを始めよう!
ダイエットの目的を明確にしよう!
まず、ダイエットを成功させるための大前提として、目的が必要です。みんな口を揃えて「ダイエットしたい」「体型を綺麗にしたい」と言いますが、目的や目標がない人はなかなか続きません。例えば、「妊娠前に履いていたスキニージーンズを履けるようになりたい」でも何でもいいです。
一番大事なことはしっかりと目的と目標が自分自身で設定出来るかどうか。
すぐにでも超えられそうな低いハードルでももちろん大丈夫です!
いざ、ダイエットというと「太ったから痩せなきゃ」とか『ダイエット=糖質を減らす』という極端な思考になりがちです。つまり間違った方向に頑張りすぎているように思います。
今は、自分のためではなくママとして、子供に栄養を与えるために身体が欲しているので、必要な食事を制限する必要はありません。栄養バランスのいい食事を心がけて、我慢しないようにしましょう。
日常の中で運動を意識させることが大事!
ダイエットを無理なく続けるために、『1日1分でできるトレーニングメニュー』がおすすめです。育児をしていると10分でも自分の時間を作ることは難しいし、1日10回を3セットなんて言われるとハードルが高いですよね。
取り入れやすく、日常に織り交ぜていく。言わばトレーニングというほどでもなくて、生活の中で身体の機能を使ってあげるということです。身体の仕組みを理解し、頭で考えながら、骨盤を動かしたり、足をあげたり、ひねったりしてみる。次のステップでは「じゃあ、赤ちゃんを抱きながら動いてみよう」とか日常の中で運動を意識させることが大事です。
ながらでできる1分間トレーニングをご紹介します!
産後体型のお悩み解決!簡単トレーニング
step 01
骨盤の前傾後傾運動
筋力トレーニング
とても重要で、とても簡単! 最初は少し難しいかもしれないけど、10日間ほど続ければ誰でもできるようになります♪
重要度 ★★★★★ 難易度 ★ |
\” どうして? ” /
産後に身体のラインが崩れてしまって
お悩みの方におすすめ!
特に産後は、体幹周り、お腹周り、股関節周りの機能が落ち、筋力が低下。使わなくなったものは、次第に使い方がわからなくなっていくのです。この運動では、頭でしっかりイメージして、身体の機能を使うことにフォーカスします!
最も重要なことは回数をこなすのではなく丁寧に動かしながら骨盤の傾く感覚をつかむこと。日常生活はもちろん、今後トレーニングする際にも活かせる運動です。
” みんなもTry! “
実践してみよう!!
前と後ろの筋肉のバランスが取れていて
骨盤自体が安定していて、
どこにも負担がかかっていない状態をつくります。
※出産以後は真っすぐ立っているようで、前傾傾向の強い方が多く見られます。カラダの背中側の筋肉に力が入っている感覚が強い方は前傾傾向が強いので、③の膝を曲げながら骨盤を後ろに倒す方を中心に行いましょう。
骨盤だけを前に倒す
OK
背骨の両脇、腰から背中にかけての筋肉、ももからお尻にかけての筋肉の緊張具合が比較的高まりますので、そこだけにシンプルに力が入っていればOK!動きとして正確に使えている証拠!
骨盤を前傾させようとする際は、膝がより伸ばされるような感覚となります。少し膝を曲げた状態から徐々に骨盤の前傾に合わせて膝が伸びてくる感覚をつかめるとスムーズな動きとなります。
NG
上半身が骨盤の動きと合わせて、反ってしまう。そうなると複合的な動きとなってしまい、シンプルな動きではなくなってしまうので注意しましょう。
骨盤を後ろに動かす
(おへそを少し斜め上に向けてあげるイメージ)
OK
前傾の時と同じで、上半身の力を抜いてあげること。おへその両脇の筋肉(腹直筋)、その奥にある筋肉(腸腰筋)にしっかりと力が入っているかどうか。後ろに倒した時にお腹をちょっと触ってあげて、お腹に力が入っているかを確認してみよう!
骨盤を前傾させる時とは逆で、膝が伸びきった状態から後傾に合わせて徐々に曲がってくる感覚をつかめるとスムーズな動きとなります。
NG
上半身に力が入ったり、猫背になってしまうのはNG。前傾運動同様、複合的な動きとなってしまい、シンプルな動きではなくなってしまうので注意しましょう。
ワンポイントアドバイス
膝が伸びきっている状態での前傾・後傾の動きは骨盤の構造上動く範囲が狭く、初めの頃はイメージがしづらいので、膝を軽く曲げた状態から動きを作ってあげると上達の近道です!
1〜3の動き
(フラットな状態から前傾、後傾)
を1日3〜4回続ける
\チェックポイント/
↑スタッフを挑戦してみました!
ポイントをチェック スムーズに動かせた? ノンストレスで出来た? 身体が骨盤を倒したいと思った時にできた? |
step 02
膝上げ振り子運動
体幹トレーニング
重要だけど、難易度もちょっと高め。
まずはSTEP1”骨盤の前傾後傾運動”が自然にできるようになってからTryしましょう! 産後に足が太くなった、お腹周り、お尻周りのお肉が気になるという人におすすめ!
重要度 ★★★ 難易度 ★★★★ |
\” どんな動き? “/
股関節の連動と骨盤の前傾後傾の連動によって、膝を持ち上げる運動。
産後は腹部の筋肉が正確に使えなり、筋力が弱ってしまうので、機能を元に戻すことが目的です。通常、膝を持ち上げようとすると太ももの力で持ち上げてしまいます。しかしこの運動のポイントは、お腹の力で持ち上げること。そうすることで、このシンプルな動きが体幹トレーニングになります。
” みんなもTry! “
実践してみよう!!
かかとを揃え、楽に立つ
(最初は何かに掴まっててもOK)
片足の膝を上に持ち上げる
ワンポイントアドバイス
一度試してみると実感すると思いますが、膝を上げようとすると、腿(もも)の前側の筋肉を優位に使いがちです。人の身体は、どうしても強い筋肉で補おうとするためですが、これが体型の乱れの原因になります。お腹の筋肉を使って膝をあげる練習をしてあげましょう。
膝を90度以上曲げてしまうと太ももの付け根付近(鼠径部)や股関節に負荷が強くかかってしまうため注意しましょう。
OK
足は力が抜けて、お腹がしっかり使えると、ちょうどおへその横あたりの筋肉(腸腰筋)が使えている証拠。
その流れで今度は足を後ろに伸ばす。
ワンポイントアドバイス
骨盤は前に倒れ、上半身もそれに伴いやや前傾状態になります。後ろに振った足はカツンと止まる場所までしっかり伸ばしてあげること。
(振った方のももの裏やお尻、腰から背中に緊張感が高まります。)
2〜4の動きを3,4回続ける
ワンポイントアドバイス
無駄な力を抜くこと
身体を安定させるため、何かに掴まってもOK!通常、足を前に軽く膝を伸ばして出した時は、強いテンション(張力)がかかります。これを抜くために膝を軽く曲げてあげる、つま先を下に降ろすと力が抜けるようになります。ここからスムーズに膝を上にあげるようにと思ってあげるとお腹に力がしっかり入ります!
たくさんやるより、少ない回数で動きに集中すること
10回、20回とたくさんやることよりも、2〜3回集中して頭で考えながら作ってあげることが一番大事です。STEP1〜3の動きがスムーズにできるようになってきたら、赤ちゃんを抱きながらでも、少し足を曲げる動きや、後ろに引く動きが安定してだんだんできるようになっていきます。それは体幹が鍛えられている証拠。
無理して腹筋運動などのツライ運動をしなくてもいいんです
体幹トレーニングといえば、腹筋運動の姿勢で1分〜2分などが主流ですが、日常生活の中では不自然な動きです。体幹トレーニングで大事なことは動きの中で体幹周りの筋力を正確に使えているかどうか。
体幹の筋力の役割は、簡単にいうと『身体の動きを安定させる』ことです。つまり、動的な動きの中で安定した体幹動作とシンプルな関節の動きができるかどうかがポイントです。
step 03
くびれをつくる!横腹運動
STEP1・2の応用トレーニング
STEP2”腿上げ振り子運動”は縦の動き。 次のステップは、横の動きをプラスしてあげましょう。 STEP1〜2の運動を完璧にマスターしてからTryしてくださいね♪
重要度 ★★★ 難易度 ★★★ |
\” どんな動き? “/
横腹(腹斜筋)の力で、骨盤を上げる運動です。
お腹周りの脂肪をすっきりさせて、くびれのある美体型を目指しましょう。
” みんなもTry! “
実践してみよう!!
かかとを揃え、まっすぐ立つ(最初は何かに掴まってもOK)
膝を伸ばしたまま、片足を真横に持ち上げる
ワンポイントアドバイス
足を振った方の骨盤を引き上げるようなイメージをもちながら行うとしっかりお腹に力が入ります。
初めのうちは軸足(足を上げていない方)に力が入りすぎてしまうことがあるので、何かにつかまって行うか、交互に2・3回づつ丁寧に行いましょう。
両足繰り返し、2〜3回続ける
\” マメ知識 “/
単純に「とりあえず腹筋する」のは意味がない!?
一番大事なことは効率性。
それぞれの筋肉がどういうパフォーマンスに役立つのか、自分がどういう動きに弱いのか、ということに気づくことが第一歩です。その部分をクリアしてから、もっと強化するために鍛えていく順序で進めないと、すべてが中途半端な結果に…何も解決されず、ダイエットの失敗に繋がります。
産後体型は、太ももが発達!?
産後は、太ももに肉がついてしまう人が多いです。理由は、筋力の作用として、弱い筋力を使わずに強い筋力を使って生活をカバーしていくので、使う部分がどんどん発達していくためです。まず、弱い筋肉や妊娠中に使わなくなった部分をしっかり見つけてあげることが大事。そして、産後にお腹周りの筋肉を鍛えるため、縦の動きや横の動きを入れてあげることが効果的です。
(次回につづく)
これまでの連載 |
vol.1 【産後ダイエット】”骨盤の歪み”の本当の意味とは?(前編) |