いつ起こるかわからない非常事態に備えるための「防災」は大切です。しかし、日常生活に追われる中で、非常時のことを常に意識しながら過ごすことは難しく、つい「いつかやろう」と後回しになってしまうという方も多いのではないでしょうか。

 

そんな中、備えない防災としての「フェーズフリー」という考え方が広がってきています。非常時だけでなく日常生活の中でも役立つ商品やサービスは、「防災ってなんだか面倒」と感じていた筆者にもぴったり!そこで、子育て世代の視点からフェーズフリーについて考えるオンラインイベント「ママたちと考えるフェーズフリーな暮らし」(主催:株式会社明治、一般社団法人フェーズフリー協会)に参加してきました。

 

 

備えない防災「フェーズフリー」とは?

 

 

フェーズフリーの「フェーズ」とは、日常時や非常時など、私たちの生活におけるある特定の局面のことを指しています。通常の防災の考え方では、日常時のフェーズと非常時のフェーズとの間には大きな壁ができており、私たちはその壁を隔て、さまざまなアイテムやサービスを使い分けています。

 

一方、フェーズフリーの考え方に基づいたアイテムは、「日常時のいつもの生活で便利に活用できるのはもちろん、非常時のもしもの際にも役立つ」商品やサービスのことです。

引用元:https://phasefree.or.jp/phasefree.html

 

 

こういったフェーズフリー品は、防災をより身近にしてくれるだけでなく、日常生活をアップグレードさせてくれるというメリットもあります。「『いつも』も『もしも』も私たちの生活の質を上げてくれる」というのが、今回のオンラインイベントのテーマでした。

 

 

フェーズフリーを実現するさまざまなアイデア

 

フェーズフリーという考え方をより具体的に理解するために、今回のオンラインイベントでは、フェーズフリーの考え方を実践している住宅づくりや商品、身近なアイテムなどが紹介されました。

 

 

1. フェーズフリー住宅

 

 

最初の事例は「フェーズフリー住宅」。解説は、NPO法人フェーズフリー建築協会に所属し、フェーズフリー住宅の普及に取り組んでいるゆくり設計室代表の松山千晶さんでした。松山さん自らが設計した「フェーズフリー住宅」であるご自宅のツアーとともに、「フェーズフリーな暮らし」を実現するための3つのポイントについて説明がありました。

 

» 自宅に自然を取り込む

広々とした庭やベランダなどは、住宅内に日光を取り込むというメリットだけでなく、天気の移り変わりを観察できたり、玄関以外の避難導線となったりするなど、非常時にも大きな役割を果たします。室内に観葉植物を置けば冬場の乾燥対策にも。

 

» 家具のレイアウトの工夫

高い場所にある収納には扉をつけ、見た目をすっきりさせながら、地震による揺れにも備えます。机や椅子、ソファなどの家具のレイアウトにも工夫が必要。日常生活における導線を意識することによって、片付きやすく、非常時には逃げ道を確保しやすい空間となります。

 

» 継続できるフェーズフリー的ローリングストックとアイテム選び

いつも使っている食材を少し多めに買い置きし、使った分は新しく補充することによって、普段の生活に備蓄品を取り込む「ローリングストック」という考え方があります。常に一定量の備蓄品を蓄えることができ、非常時にも使い慣れた食材で料理できるというメリットがあります。食材は賞味期限が長く簡単に調理できるものが理想です。松山さんのおすすめは乾物。日持ちする上に水で戻すとすぐに食べられます。

 

 

2. 液体ミルク

 

次に紹介されたのは、株式会社明治が販売する液体ミルク「明治ほほえみ らくらくミルク」です。海外では授乳手段の一つとして広く普及しています。日本では、東日本大震災をきっかけにママたちが声をあげ、20193月に販売が開始されました。

 

液体ミルクは誰でもすぐ簡単に授乳できるのが特徴です。お出かけ時や夜間の授乳時など、日常生活のあらゆる場面で活躍します。筆者は二人の子供たちを母乳で育てましたが、授乳期間中は片時も赤ちゃんから離れられませんでした。液体ミルクがあれば、もっと夫や母などに頼ることができたかもしれないと感じました。

 

さらに、液体ミルクはお湯や計量カップがなくても赤ちゃんに飲ませることができるため、全国で100以上の自治体で備蓄品として採用されているそう。とくに「明治ほほえみ らくらくミルク」は、賞味期限が国内最長の12か月で、容器は頑丈なスチール缶製。日常時だけでなく災害時にも役立つとフェーズフリー認証を取得しています。専用のアタッチメントによって乳首を取り付ければ、ますます便利に使えます。

 

 

3. ママバッグ

実際に災害が起こってしまった際、避難所へ持っていくための「防災バック」。一般的な防災バッグには、非常食や携帯トイレ、ブランケットなどが入っていますが、赤ちゃんや乳幼児のためのアイテムを追加する場合、何をどれだけ入れればよいのか悩んでしまいますよね。NPO法人ママプラグ理事の冨川万美さんによると「ママバッグこそ最強の防災アイテム」。普段のお出かけ時に必要な着替えやオムツなどのアイテムは、いざという際に必要なものでもあるため、それらをひとまとめにしたママバッグは防災バッグとしても使えるのです。

 

フェーズフリーの観点から見てみると、「頑丈」「防水」「持ち運びしやすい」などの特徴を兼ね備えたママバッグであればさらに良いです。季節や子供の成長に応じて、常日頃からしっかりと内容を充実させておくことも大切だということです。

 

 

4. 身の回りにもさまざまなフェーズフリー品が

 

 

最後に、今回のオンラインイベントに参加したママたちから、家の中にあるフェーズフリーアイテムとして、ポップアップテントやカセットコンロ、土鍋などのアイテムが提案されました。どのアイテムも防災用品として使用できるだけでなく、日常時の生活も豊かにしてくれるという点がポイントでした。

 

 

「ママたちと考えるフェーズフリーな暮らし」イベントに参加して

 

 

我が家では、防災用品として防災バッグや備蓄品など一通りのアイテムは揃えていましたが、定期的に賞味期限を確認するのが面倒だなと感じていました。また、防災用品ばかりに気を取られていたので、住宅内の避難導線についてあまり真剣に考えたことはありませんでした。

 

今回のオンラインイベントでフェーズフリーという考え方を知り、いつもの暮らしの延長として、防災をより身近に捉えることができました。また、普段使っているアイテムがフェーズフリーかどうか考えながら暮らすこと自体が、防災意識を高めることにつながるのだと気づきました。我が家も今後できるところからフェーズフリーを意識した暮らしにチャレンジしていきたいです。