離乳食、子供の好き嫌い、遊び食べ、時短調理…。育児を語る上で「料理」は欠かせないテーマの一つです。しかし、忙しさと義務感に追われるうち、それまで好きだった料理が面倒に感じてしまうママたちも多いのではないでしょうか。
2012年に「小さなパリのキッチン」を出版すると、そのクリエイティブでおしゃれな料理スタイルで、瞬く間に世界中の人々の心をとらえたレイチェル・クー。彼女がキッチンに立つ姿は、いつも明るくとにかく楽しそう!限られた時間と食材を工夫しまくって仕上げる料理は、見ている人まで前向きな気持ちにしてくれます。
レイチェルさんは、フードライター兼料理人として世界中を飛び回る一方、二人の男の子を育てる母という一面も持っています。今回「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」出版記念で来日した彼女に、子供のいる家庭での料理との向き合い方についてインタビューしてきました。
レイチェルに聞いた!”子育て”と”料理”の丁度いい関係とは?
レイチェルさんが、二人のお子さんを育てるご自身の育児経験の中で、工夫されてきた料理方法などありますか?未就学児期はまだ大人のような食習慣が身についていません。遊び食べや好き嫌いなどにどう対応すればよいかレイチェルさんの考えを教えてください。
まず言いたいのは、子育てしながら料理する上で一番大切なのは「がっかりしないこと」。子供は、疲れていたり機嫌が悪かったりという理由で、いとも簡単に食事に「NO!」と言います。食べなければ食べなくても放っておきます。空腹になれば子供たちは必ず何かしら食べるので、毎食しっかり食べさせなくても良しとしましょう!
その上で私が気を付けているのは、何点かあります。
Contents
出来るだけたくさんの味覚をトライさせること
イギリスのフードライター、ビー・ウィルソン氏の著書には「幼少期にたくさんの味覚を経験した人は、成長したとき、それらの味をより好むようになる」ということが書かれています。またイギリスの「Tiny Tastes」というプログラムは、子供たちがさまざまな味をスプーン一杯ずつ味見し、ご褒美としてシールをもらえるという取り組みがあります。完食しなくても、スプーン一杯でも良いので、子供たちには「とりあえず一口食べてみてね」と言うようにしています。
子供たちに押し付けないこと
子供という生き物は、四六時中親に生活を管理されているので、何かにつけて意思表示したがります。食事の時間もその一例で、親が「食べなさい」と言うと「食べない」という方法で自分の主張を通そうとします。つまり「食べなさい」ということは逆効果なのです。我が家の食卓は「今日の食事はこちら。食べるか食べないかはご自由に」という姿勢です。
家族で同じ食事を囲むこと
私は子供だけのために特別なメニューを作りません。家族みんなで同じものを食べます。もちろん子供用の分は調理の途中で取り分け、塩分を控えめにし、スパイスもほんのわずかしか入れません。
与えすぎないこと
現代人は食べすぎの傾向があります。アンティーク食器を見るとそれがよく分かります。当時のメインディッシュ用のお皿は、なんと現代の前菜用のお皿のサイズなのです。子供が必要とする食事量は、実は私たちが思っているよりも少ないかもしれません。食べ残しなどで悩んでいる場合は、このパターンが当てはまるかもしれません。
今は大変ですが、料理を作り続けていればいつか報われると考えています。
仕事や育児など時間に追われる現代人の生活の中で、料理にじっくり時間をかけるというのは難しい場合もあります。レイチェルさんはどう折り合いをつけていますか?
育児していると30分でもまとまった時間を取るのは難しいですよね。その30分間でさえ、料理だけに費やすことはできません。
まずは、自分自身に対して寛容になることです。家庭料理はもちろん良いですが、それが100%でなくても大丈夫!我が家も日曜日はピザを取ります。
また、冷凍庫を味方につけましょう!私がしっかり料理するのは週の半分くらい。一度に2回分の料理を作っておいて、冷凍保存しておきます。私はよく惣菜パイを作ります。パイの具材(二種類くらい作ります)をたくさん作り、アルミの保存容器に小分けにして、冷凍保存します。食べるときは、パイシートを上にかぶせてオーブンで焼くだけ。本当に簡単ですが、効率よく料理でき、しかも美味しいので、こういった料理を作った日には自分で自分をほめてあげます。笑
さまざまな国や文化に触れられて、世界各国の料理を熟知されているレイチェルさんですが、お子様に伝えたい「おふくろの味」はありますか?
どんな料理も「食事の喜びをみんなで共有する」ということを伝えたいです。子供たちには、食事を通して素敵な思い出(lovely memories)をたくさん作ってあげたいです。
「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」の中には、美味しそうなレシピがたくさんありますが、特に小さな子供にもおすすめのレシピがあれば教えてください。
「ローストバターナッツのワッフル」(「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」154~155ページ)はいかがでしょうか?バターナッツ(またはカボチャ)の甘さを活かし、砂糖は使いません。子供用に作る場合は、塩もレシピの分量より少なくして作った方が良いでしょう。
©『レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン』より/Photography © David Loftus, 2018
ワッフルメーカーをお持ちでない場合は、パンケーキのように焼いてもOKです。このワッフル、冷蔵または冷凍保存もできますよ!でき立てはカリカリしていますが、保存して温めなおすとフワフワの食感になります。小さな子供には、スティック状に焼いておいて、手づかみ食べさせても良いですよね。作り置きしておいて、時間がないときのママの軽食にもピッタリ!
レシピでは、いちごジャムや生クリーム、または赤玉ねぎやキャビアなど、大人向けのトッピングをご紹介しています。子供用なら、チーズやフルーツ、ミックスベジタブルなどいかがでしょう?子供が自由にトッピングを選べるようにしてあげると、楽しさも倍増します。
※こちらのレシピは、後編でご紹介予定です。
©『レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン』より/Photography © David Loftus, 2018
「犬が食べちゃったチョコレートケーキ」(「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」126~127ページ)はベジタリアン、乳製品フリー、グルテンフリー、ナッツフリーのヘルシーなお菓子です。材料さえ揃えばあとは混ぜるだけで簡単なので、子供と一緒に作るレシピとしてもおすすめです。こちらのレシピに使っている「フラックスシードパウダー」ですが、私は卵の代替品としてよく使います。
©『レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン』より/Photography © David Loftus, 2018
「じゃがいもとグリーンピースのダンプリング」(「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」170~171ページ)は栄養価が高く、こちらも子供向けにぴったりです。伝統的なレシピには、グリーンピースは入っていません。これは私流。グリーンピースを入れると色鮮やかになり、しかも栄養価が高くなるでしょう?こういう風に、子供用の食事を作るときも、普段のレシピをどんどんアレンジを加えていくと良いと思います。
前編の終わりに
今回、「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」出版記念で来日した彼女のイベントに参加し、直接インタビューの時間をいただき、お話しさせていただいた内容をお伝えしました。
▲「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」出版記念イベントはスウェーデン大使館で行われました。(撮影/西山 航 (世界文化社))
印象的だったのは「子供に伝えたいおふくろの味は?」という質問に対し、どこか一つの国の料理ではなく「食事の喜びを共有すること」と答えたレイチェルさん。
何よりもまず「楽しさ」を基準に食と向き合ってみるレイチェル流の考え方は、どんなに大変な時でも料理という時間を明るく前向きなものに変えてくれます。
▲スウェーデン大使館で、レイチェルの再現レシピを片手に談話する参加者(撮影/西山 航 (世界文化社))
イベント内では、掲載されたレシピが再現され、参加者にビュッフェスタイルで振舞われ、贅沢な時間でした。一部ですが、読者のみなさまにご紹介します。
▲レイチェル流スウェーデンミートボールや…
▲ラズベリーとライ麦粉のクッキー
▲チーズパイなど、「レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン」掲載レシピがブッフェスタイルで参加者に振る舞われました。
見た目にも、身体にも、心にも優しいお料理に癒されました。
後編ではそんなレイチェルさんがママたちにおすすめする「ローストバターナッツのワッフル」のレシピをご紹介します。
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今回のプレゼントは、日頃mamiohをご覧いただいている読者の皆さまに日頃の感謝の想いを込めて開催いたします。
毎日、家事・育児・仕事と忙しい日々の中で、ささやかですが温かい気持ちをお届けできますように。今後とも、mamiohをよろしくお願いいたします。
▽ご応募は1分ほどで完了します。お気軽にバナーリンク先よりご応募くださいませ。
レイチェル・クーの特集記事はこちら
前編:【子育てしながら料理を楽しむコツ】子供に伝えたいのは、食事の喜びをみんなで共有すること。料理人レイチェル・クー(前編)
後編:【子育てしながら料理を楽しむコツ】子どもと一緒に!ローストバターナッツのワッフルをアレンジ。料理人レイチェル・クー(後編)
撮影/西山 航 (世界文化社)
フードライター兼料理人
レイチェル・クー
1980年生まれ。イギリス・クロイドン出身。
ロンドンの名門芸術大学セントラル・セント・マーティンズ・カレッジを卒業後、フランス菓子への情熱が高じてパリに移住。ル・コルドン・ブルーで学び、製菓ディプロマを取得。2012年に出版された『The Little Paris Kitchen(小さなパリのキッチン)』は全英ナンバーワンベストセラーになり、13カ国語に翻訳され、BBCのシリーズ番組として放映。その後、世界150ヶ国以上で放映される。ホテルやレストラン、一流企業のコンサルタントも務め、2016年にスウェーデンに移住し、現在はスウェーデン人の夫と子どもと暮らす。日本では、2016年3月よりNHK Eテレにて「レイチェル」シリーズが放送されている。